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黒渕トオル
黒渕トオル

「生涯、黒縁メガネ。」と決めこむ、兼業フリーライター。眼鏡業界を、独自の視点で書き綴る。

人には「羞恥心」というものがある。いわゆる“恥ずかしい・・”そんな気持ちを抱く事はあまり気持ちの良いものではない。どんな綺麗な人でも、賢い人でも、恥ずかしいと感じる瞬間がある。不意にやって来るこの感情は、あらかじめ防ぎようがない。誰もが経験する“恥ずかしさ”その基準は、個人個人で様々だ。

 女性によっては、肌の露出の多い衣類を“恥ずかしさ”から選択しない人もいるだろう。体型のコンプレックスなど様々な理由が考えられそうだが、この露出の多い衣類を、好き好んで着る女性がいるのもまた事実である。

年齢、生活環境、友人関係など・・これらによって“恥ずかしさ”の基準は変化する。母親との買い物にベタベタくっついて離れなかった少年は、思春期には“恥ずかしさ”からそれを拒む。いわゆる“ジャージ族”は、田舎のコンビにではむしろ普通で、都心とは少し感覚が違う。しかしそれも、友人関係において周りが皆“ジャージ”ならば、都心の繁華街を歩く事にも“恥ずかしさ”を覚えないのである。

 そう考えると、「羞恥心」には“絶対的”なものは無いのではないか・・そんな考えも浮かぶ。誰しもが“恥ずかしい”と思える様な、「ポーズ」も、全国ネットでネタにしてしまえば、幼稚園児は皆“恥ずかしさ”を忘れ、マネをするのだ。

しかし私の知るかぎり、メガネ戦士にはこの「絶対的羞恥心」が存在する。

雪国の冬。早朝は特に冷込みが激しく、毎日の通勤・通学はこの時期とても大変だ。本数が少ない上、雪などの悪天候が重なると遅れるバスを待つのは寝起きには堪える。吐く息は白く、吸い込めば氷点下の冷気で咳き込む程の寒さの中、とあるメガネ戦士はバスが来る方向をじっと待っていた。

 メガネをかけているからといって、この寒さが和らいだり、増したりする事は無いが、メガネ戦士は、ある“リスク”をこの時点で抱える事になる。冷気でフレームやレンズは、本人も気付かない程、カチンコチンに冷たくなる。そこへ、待ちわびたバスが到着。早速乗車するメガネ戦士・・しかし。
 通勤時刻のバスは、田舎と言えども混雑し、暖房の効いた車内は外気とは裏腹に、熱気と湿気でムンムンだったのだ・・。

その結果、メガネ戦士のメガネは、ものの見事に”曇る”のである。

この“メガネが曇る”という状態。これは何とも言えず恥ずかしい。上手く表現出来ないが、とにかく無性に恥ずかしい。“気にしない”とか“慣れる”とか、そんな理屈は通用しない。なぜなら前が見えず、恥ずかしさも手伝って、すぐにメガネを外すからだ。

 メガネ戦士にとって、“温かい麺物”を食べる時も、この「曇り」に対する注意が必要になってくる。麺を冷まそうと必要以上に息を吹きかけ、不注意にもメガネを曇らせてしまったその瞬間、恥ずかしさと自己嫌悪に襲われ、食欲すらも失う事態になりかねない。

 「曇ったメガネをかけた状態」はどの様なものなのか。このどうしようもない恥ずかしさは、曇ったメガネで周りの状況が分からず、近くに人がいた場合は「笑われているのではないか・・」と、自らの恥ずかしい姿に対する周囲の反応を、マイナス方向へと過剰妄想してしまう事から生まれているのだ。

そう、本人にとっては、まるで”目隠しをされ裸で人前に立たされている”そんな感覚にも似た、絶対的な羞恥心がこみ上げているに違いない。

視力抜群のスタンダードさんや、コンタクトさんには分からないであろうこの感覚。実際、目の前で誰かがメガネを曇らせたら・・。もしかしたら、何とも思わない人の方が多いのかもしれない。世間一般的にはそこまで注目すべき事態ではないからだ。そんな中、人一倍笑いをこらえきれず、吹き出している人間がいたとしたら・・。それはやはり我々メガネ戦士の同志なのではないだろうか。